【レイモンド・チャンドラーに学ぶおすすめ英語表現】プレイバック Playback ― ハードボイルドな修飾表現 10 通り vol. 2

Raymond Chandler
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アメリカのハードボイルド小説作家 Raymond Chandler レイモンド・チャンドラー の小説を題材に、生きた英語表現を学んでいきたいと思います。
今回取り上げるのは Playback プレイバック です。

その中でもハードボイルド小説の雰囲気を醸成していく修飾表現を見ていきます。
こういう修飾表現が独特の小説世界を作り上げていきますよね。

Contents

修飾表現 10 通り

acidly:辛辣に・とげとげしく

She smiled rather acidly, inventoried her handbag and tossed me a manila envelope.

Raymond Chandler, “Playback” p4., Vintage Crime/Black Lizard

acidly 辛辣に・とげとげしく という意味を添える副詞です。
say acidly 不機嫌に言う のような使い方をします。

ここは依頼主の美人秘書 Vermilyea が主人公の私立探偵 Marlowe に依頼内容を伝えに来る場面ですが、smile acidly というのは 形だけの冷たい作り笑い といった感じですかね。
Vermilyea のお高くとまったような、探偵稼業を小ばかにしたような態度が透けて見えるような描写ですね。

flashy:派手な・けばけばしい

She smoked awkwardly as is she wasn’t used to it, and while she smoked her attitude seemed to change, to become more flashy and hard, as if she was deliberately vulgarizing herself for some purpose.

Raymond Chandler, “Playback” p10., Vintage Crime/Black Lizard

flashy派手な・けばけばしい という意味です。

Marlowe が調査対象者の女性 Miss Mayfield を見つけて遠くからその様子を観察している場面です。
Mayfield がタバコを吸う姿がぎこちなく映りますが、タバコを吸うにつれて徐々にその雰囲気がけばけばしくて態度が硬くなっているように見えてきます。
一筋縄ではいかなそうな前途を暗示しているかのような描写の 1 つではないかと思います。

tersely:簡潔に

The driver handed me back my wallet. “Lost my left eye,” he said tersely.

Raymond Chandler, “Playback” p13., Vintage Crime/Black Lizard

tersely 簡潔に という意味の副詞です。
say tersely 素っ気なく言う・きびきびとした口調で言う といった使い方をします。

Marlowe とタクシー運転手との間の素っ気ないやり取りの場面です。

こちらの記事 で解説していますが、タクシー運転手をスラングで hackie と言います。

be frank about it:隠し立てをしない・はっきり言う・露骨

He shook his head slightly. “At least you’re frank about it.”

Raymond Chandler, “Playback” p16., Vintage Crime/Black Lizard

be frank about it隠し立てをしない・はっきり言う という意味です。
to be frank with you 率直に言うと ・はっきり言うと はよく聞く言い回しですよね。

ここでは Marlowe がホテルの受付係に 何泊ですか と聞かれて、今さっきチェックインしたばかりの女性と同じ分だけ と理由も言わずに告げた場面です。
ホテルの受付としてはそんな要求を受け入れるわけにはいきませんし、どんな関係があるのかもわからないので、少なくとも理由を隠さずに言ってください と困惑気味に答えているところです。

be up to my neck in ~:~にどっぷりはまる・身動きが取れない

I was up to my neck in the soft corn.

Raymond Chandler, “Playback” p17., Vintage Crime/Black Lizard

be up to my neck in ~~にどっぷりはまっている・身動きが取れない という状態を表現します。
~の中に首まで入っている ということなので、何となくわかりますよね。

soft cornお世辞・おべっか という意味のスラングで、soft-soap おだてる・ごまをする から来ているようです。

ここでは Marlowe が目的を達成するために、自分のキャラを変えてまでお世辞めいたセリフを言う場面ですが、ここまでの会話の流れからいくと相手をおだてながら相手の喜びそうなことを言うしかないな というニュアンスがこの一文に込められているのだと思います。

bearable:我慢できる・耐えられる

The room was bearable.

Raymond Chandler, “Playback” p20., Vintage Crime/Black Lizard

bearable 我慢できる・耐えられる という状態を表す形容詞です。
unbearable だと 耐えられない・我慢できない となります。

ホテルにチェックインした Marlowe が部屋の様子を見て まだ我慢できる と口の悪い評価をしているところです。

nasty:不快な・意地の悪い・やっかいな

The tag end of a rather nasty conversation.

Raymond Chandler, “Playback” p27., Vintage Crime/Black Lizard

nasty 不快な・意地の悪い・質の悪い・やっかいな といった不快な状態を表現する形容詞です。
スラング的な使い方では意味が逆になって 最高・素晴らしい という意味での口語表現もあるようですので、そこは文脈を読み取る必要がありますね。

The tag end終わりの部分・断片 という意味です。

ここはMarlowe Mayfield に接触して緊迫した会話が始まったシーンです。
Mayfield どこまで会話を聞いていたの? と問われ、だいぶ質の悪い会話の断片部分さ と答えるセリフです。
聞いていたのは the tag end 会話の断片/最後の方 と言いながら、その内容は nasty 質の悪い ものだったと言っているということは、もはや全部聞いていたと言っているようなものですね。

quizzical:いぶかし気な・疑わし気な・からかうような

Her eyes were open and quizzical.

Raymond Chandler, “Playback” p31., Vintage Crime/Black Lizard

quizzical いぶかし気な・疑うような という意味の形容詞です。
quizzical eye疑うような目つき という表現があります。

Mayfield Marlowe のことを信頼できる人物なのかどうか、まだ確信が持てない様子が感じられます。

corny:陳腐な・つまらない・くだらない

“I know it sounds corny, but I could drill you and get away with it. I really could”

Raymond Chandler, “Playback” p32., Vintage Crime/Black Lizard

corny は 陳腐な・つまらない・くだらない という意味です。
sound corny 陳腐に聞こえる という表現がここで使われています。

drill 穴を開ける ですが、口語で 銃で撃ち抜く という意味もあって、ここではそちらですね。

get away with it逃げおおせる・処罰を免れる という意味です。

ここでは強請屋の Larry Marlowe に向かって脅し文句を言う場面です。
このセリフ、陳腐に聞こえるのはわかっているが、お前を銃で撃ち抜くこともできるし、逃げおおせることもできる、これだけだと確かに陳腐な強がりにしか聞こえないですね。
しかし今は Larry が圧倒的に優位な状況にいるので、何をされるかわからない怖さが漂っています。

こちらの記事 で解説していますが、強請屋blackmailer と言います。

say thickly:しわがれ声で・だみ声で

“Okay,” I said thickly.

Raymond Chandler, “Playback” p32., Vintage Crime/Black Lizard

say thicklyだみ声で言う・しわがれ声で言う という意味です。
thick voiceしわがれ声 という表現になります。

Marlowe Larry に押さえ込まれて圧倒的に不利な形成ということもあり、 Marlowe にしては珍しく素直に okay わかった と言っていますね。

まとめ

Raymond Chandler の小説 Playback から、ハードボイルド小説の雰囲気が伝わってくる修飾表現を 10 個取り上げてみてみました。
こういう表現が小説の世界を作り上げているのが伝わってきますね。

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