アメリカのハードボイルド小説作家 Raymond Chandler レイモンド・チャンドラー の小説を題材に、生きた英語表現を学んでいきたいと思います。
今回取り上げるのは Playback プレイバック です。
その中でも人物の特徴を表現する単語や言い回しを見ていきます。
スラングや、かなり口の悪い言い方が数多くありますが、そういう表現を知るのも楽しいですよね。
Contents
人物表現 10 通り
buster:ねぇ、おい
“Don’t get funny with me, buster. I get annoyed rather easy.”
Raymond Chandler, “Playback” p35., Vintage Crime/Black Lizard
buster は ねぇ、おい という呼びかけで使われます。
割と乱暴で少し軽蔑のこもったような感じですかね。
日常会話で使う際には使う相手に注意が必要かもしれません。
主人公の私立探偵 Phillip Marlowe の部屋に現れた別の探偵 Goble との会話です。
お互い挑発するかのように乱暴な口をききあっていますね
bitch in heat:誰とでも寝る女
“I’m no bitch in heat,” she said between tight teeth. “Take your paws off me.”
Raymond Chandler, “Playback” p31., Vintage Crime/Black Lizard
bitch in heat は 誰とでも寝る女・盛りのついた女 という意味です。
bitch はもともとは 雌犬 という意味ですが、そこからスラングで 女 を表す軽蔑的な表現ですね。
in heat は 発情している・盛りのついた という様子を表します。
合わせて bitch in heat で 発情期の雌犬 → 盛りのついた誰とでも寝る女 となります。
かなり口の悪い表現ですので使う場面には要注意です。
Marlowe が、調査対象者の Betty Mayfield に接触を図った場面です。
徐々に緊張が高まってきたところですね。
hunk of beef:魅力的な男
“[…] And who is this hunk of beef, baby?”
Raymond Chandler, “Playback” p31., Vintage Crime/Black Lizard
hunk of beef は 魅力的な男 という意味です。
hunk は セクシーで強くたくましい男・いい男 という意味で、それに beef 筋肉もりもりで強そうな男 をつけて強調している表現ですね。
Marlowe と、Mayfield を付け回す強請屋の Larry Mitchell が鉢合わせる場面です。
お互い軽口を叩きあって挑発しているセリフですね。
bellhop:ベルボーイ・使い走り
A Mexican in a green bellhop’s uniform drove up in somebody’s Chrysler New Yorker […]
Raymond Chandler, “Playback” p37., Vintage Crime/Black Lizard
bellhop は ベルボーイ・使い走り のことです。
ホテルで荷物を運んだり客の車を移動させたり、何かと細かい用事を言いつけられ手対応する係のものですね。
少し場面が変わって、何かが起こる前の落ち着きを感じさせるシーンです。
bruiser:力強い大男
A big bruiser with thick glasses got out and checked on the wall phone, then got back into his cab and pulled a magazine out from behind his rear-view mirror.
Raymond Chandler, “Playback” p38., Vintage Crime/Black Lizard
bruiser は 力強い大男 のことです。
喧嘩っ早いような印象を与えます。
Marlowe が人探しをしていて周囲を観察している場面ですね。
smart cookie:賢い人・利口な人・頭の切れる人
“I just knew I’d picked a smart cookie,” he said unpleasantly.
Raymond Chandler, “Playback” p40., Vintage Crime/Black Lizard
smart cookie は 賢い人・頭の切れる人 という意味です。
cookie にはスラングで 人・やつ という意味があります。
- sharp cookie:鋭い人
- shrewd cookie:抜け目のないやつ
- tough cookie:手ごわい相手・タフな人
などの表現があります。
Marlowe が依頼人の Umney に状況報告の電話をかけた場面です。
高圧的で上から目線の Umney が Marlowe に嫌味を言うセリフですね。
hatcheck:コートなどを一時預かりする人
Nobody was upstairs but the hatcheck girl and an elderly party in a phone booth whose expression suggested that nobody better fool with him.
Raymond Chandler, “Playback” p44., Vintage Crime/Black Lizard
hatcheck は コートなどを一時預かりする人 のことです。
ホテルやイベント会場などの受付などでありますよね。
強請屋の Mitchell と調査対象者の Mayfield の後を追ってレストランバーに Marlowe がやってきた場面です。
slob:イヤなやつ・だらしない人
“Let go of me, you drunken slob,” she said breathlessly but very distinctly.
Raymond Chandler, “Playback” p46., Vintage Crime/Black Lizard
slob は イヤなやつ・だらしない人 を表すスラングです。
軽蔑的な表現ですね。
強請屋の Mitchell と半ば強引にレストランバーで食事をすることになった Mayfield が、酔って絡んでくる Mitchell に気の強いセリフを吐いています。
moll:愛人
“What a lot of different girls you are. Now you’re making like a moll. […]”
Raymond Chandler, “Playback” p55., Vintage Crime/Black Lizard
moll は 愛人 のことです。
ヤクザやチンピラなどの愛人を言うようですね。
物語は急展開を迎えて、前半の山場の一つです。
強気に見えていた Mayfield ですが、取り乱した様子で夜中に Marlowe に助けを求めます。
人が変わったような Mayfield に対して Marlowe がぴしりというセリフです。
dreamboat:魅力的な人
“[…] You didn’t like dreamboats like Mitchell making a pitch at you. […]”
Raymond Chandler, “Playback” p55., Vintage Crime/Black Lizard
dreamboat は 魅力的な人 のことです。
直訳してみると 夢の船 ですが、何となくわかるような気がしますね。
前半の山場を迎えた場面、Marlowe が Mayfield に何があったのかを聞き出そうとしているところです。
まとめ
Raymond Chandler の小説 Playback から、人物の特徴を描写した表現を 10 個取り上げてみてみました。
スラングや品の無い言い回しも多くありますね。
こういう表現が人物の特徴を浮かび上がらせながら、小説の雰囲気を作り上げていくのが伝わってきますね。