アメリカのハードボイルド小説作家 Raymond Chandler レイモンド・チャンドラー の小説を題材に、生きた英語表現を学んでいきたいと思います。
今回取り上げるのは Playback プレイバック です。
その中でもハードボイルド小説の雰囲気を醸成していく、物事を表す表現を見ていきます。
こういう表現描写が独特の小説世界を作り上げていきますよね。
Contents
ハードボイルドな物事の表現 10 通り
coop:刑務所
“Been in the coop,” I said, looking up at Miss Vermilyea.
Raymond Chandler, “Playback” p6., Vintage Crime/Black Lizard
coop は 刑務所 を意味するスラングです。
もともとは 鶏小屋・狭苦しい場所 という意味があり、そこから転じて 刑務所 を指すようになったようです。
be cooped up で 閉じ込められている・閉じこもっている という表現になります。
物語の冒頭、主人公の私立探偵 Philip Marlowe が依頼人のオフィスで、その美人秘書の Miss Vermilyea と依頼内容の確認をしている場面です。
automatic:ピストル
She brought a small automatic up from her side.
Raymond Chandler, “Playback” p28., Vintage Crime/Black Lizard
automatic は ピストル・自動拳銃 のことを意味する場合もあります。
形容詞として 自動的な・自動の という意味で、そこから名詞として使われる場合は ピストル となるようです。
Marlowe が調査対象者の Betty Mayfield に接触を図った場面です。
警戒心を隠さない Mayfield がピストルをちらつかせて警告しているようです。
tough break:不運
“Tough break, huh?”
Raymond Chandler, “Playback” p30., Vintage Crime/Black Lizard
tough break は 不運・運が悪い という意味です。
tough には つらい・難しい・厳しい という意味があり、break には 運命・予言・機会 という意味があるので、合わせて つらい運命 → 不運 となるのですね。
会話の中で それは本当に残念だったね といった感じのニュアンスで使われます。
Marlowe と Mayfield の会話が続いています。
調査対象者である Mayfield の背景情報を引き出そうと、Marlowe が軽口を叩きながら応じています。
lip:生意気な口
“I’ve taken enough lip from you. […]”
Raymond Chandler, “Playback” p68., Vintage Crime/Black Lizard
lip にはスラングで 生意気な口 という意味があります。
大抵は 唇 の意味で使われることが多いですが、文脈によって意味を読み取る必要がありますね。
Marlowe と、依頼主の Clyde Umney との会話の場面です。
口の減らない Marlowe に対して Umney が感情的になってきたところですね。
crack:皮肉・冷やかし・冗談
“I ought to slap your face for that crack.”
Raymond Chandler, “Playback” p74., Vintage Crime/Black Lizard
crack は 皮肉・冷やかし・冗談 という意味でも使われます。
動詞として使って、crack a joke 冗談を言う という表現があります。
Marlowe と Vermilyea の会話の場面です。
Marlowe のこのセリフ自体がちょっとひねった冷やかし半分の冗談になっていて、クールな印象の Vermilyea を笑わせています。
dull life:退屈な生活
“Lucille has a dull life, Mr. Marlowe. […]”
Raymond Chandler, “Playback” p81., Vintage Crime/Black Lizard
dull life で 退屈な生活・退屈な人生 という表現になります。
dull が 味気ない・退屈な・ありふれた という様子を表現する形容詞ですね。
ホテルのフロントで受付係の男女と Marlowe が軽い会話を交わしている場面です。
homicide:殺人課
“[…] If you had taken an overdose, the homicide boys would be told, even if you snapped out of it. […]”
Raymond Chandler, “Playback” p85., Vintage Crime/Black Lizard
homicide は (警察の)殺人課 という意味があります。
殺人事件 という意味で使われることも多いですね。
Marlowe と Mayfield の会話の場面です。
物語は中盤に差し掛かってきたところです。
inferiority complex:劣等コンプレックス
“[…] That’s good for my inferiority complex. […]”
Raymond Chandler, “Playback” p85., Vintage Crime/Black Lizard
inferiority complex は 劣等コンプレックス のことです。
他人よりも自分は劣っている人間だ、と過剰に意識してしまう状態のことですね。
inferiority が 劣っていること・劣等感 という意味です。
Marlowe と Mayfield の会話が続きます。
phony:インチキ・でっちあげ
“[…] I’m kind of snoopy when I get roped in on a phony like that one. […]”
Raymond Chandler, “Playback” p86., Vintage Crime/Black Lizard
phony は インチキ・でっちあげ・偽物 のことです。
phony の後に名詞単語を続けて、偽の○○ という表現になります。
Marlowe と Mayfield の会話が続きます。
dope:薬
“It must have been the dope and the liquor,” she said.
Raymond Chandler, “Playback” p86., Vintage Crime/Black Lizard
dope は 薬・薬物 を意味するスラングです。
麻薬や禁止薬物のことを指すことが多いようですね。
日本語のドーピングはここから来ています。
Marlowe と Mayfield の会話が続きます。
まとめ
Raymond Chandler の小説 Playback から、ハードボイルド小説の雰囲気を醸成していくような、物事を表した表現を 10 個取り上げてみました。
こういう表現の積み重ねが小説の世界を作り上げていくのが伝わってきますね。