【NASA | 海外科学英語記事】ベテルギウスが暗くなった原因は自ら放出したダスト雲のせいだったらしい ― Betelgeuse’s dim is due to outburst dust

NASA
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オリオン座の右肩に位置し、冬の夜空で一際明るい輝きを放つ Betelgeuse
この Betelgeuse が2019年末ころからその輝きが落ちてきて、「超新星爆発の前触れか!?」とニュースになったのは記憶に新しいところです。
その後、減光から一転、増光の兆しが観測されており、超新星爆発の予兆じゃなかったのか?じゃぁなんで暗くなったんだ??と謎でしたが、その理由が解明されつつあるようです。

“Hubble Finds That Betelgeuse’s Mysterious Dimming Is Due to a Traumatic Outburst”

NASA | Hubble Finds That Betelgeuse’s Mysterious Dimming Is Due to a Traumatic Outburst より引用

Betelgeuse 自身が放出したダスト雲によって光が遮られた結果、地球から観測すると減光しているように見えたのだそうです。

何がわかってきたのか、専門用語や英語表現も一緒に見ていきたいと思います。

Contents

概要

減光の原因は自身が放出したダスト雲が光を遮ったため

NASA Hubble Space Telescope ハッブル宇宙望遠鏡 での観測により、Betelgeuse の予期せぬ減光の原因は自身から放出された物質がダスト雲を形成し、光を遮ったためのようだ、ということがわかってきたようです。

“Observations by NASA’s Hubble Space Telescope are showing that the unexpected dimming of the supergiant star Betelgeuse was most likely caused by an immense amount of hot material ejected into space, forming a dust cloud that blocked starlight coming from Betelgeuse’s surface.”

NASA | HUBBLE FINDS THAT BETELGEUSE’S MYSTERIOUS DIMMING IS DUE TO A TRAUMATIC OUTBURST より引用

unexpected dimming 予期せぬ減光 なので、予測していなかった現象が起こったんですね。
なのでその原因の解明が待たれていました。
原因については、 most likely caused by と、ほぼほぼ間違いはなさそうなんだけど、という感じで断言はしていません。
科学者の慎重な姿勢がうかがえますね。

我々の存在は巨星のおかげ

我々のような生命体が存在するためには carbon 炭素 がその構成元素として必要ですが、これらの重元素を生み出しているのが Betelgeuse のような巨星なのです。

“Massive supergiant stars like Betelgeuse are important because they expel heavy elements such as carbon into space that become the building blocks of new generations of stars. Carbon is also a basic ingredient for life as we know it.”

NASA | HUBBLE FINDS THAT BETELGEUSE’S MYSTERIOUS DIMMING IS DUE TO A TRAUMATIC OUTBURST より引用

恒星の内部では、自身の巨大な重力が引き起こす水素核融合によりヘリウムが生成され、その核融合エネルギーで恒星は光り輝いています。
やがて燃料としての水素を使い切ると、やがてヘリウムの核融合が起きてさらに重元素が生成されて…と順次続いていきますが、いつかは燃料を使い切ってしまいます。

そうするとある程度よりも重い恒星では自身の重力を支えきれなくなり、超新星爆発と呼ばれる大爆発を起こして、それまでに生成した重元素を宇宙空間に放出します。
その重元素には、carbon 炭素 も含め、この世界を形成する元素が含まれており、それが集まって我々のような生命体が生まれたのです。

つまり、我々は星の子なのですね。

星表面から放出された大量の物質が冷えてダスト雲を形成

Betelgeuse の内部で対流していた物質が、何らかの原因で星の表面を超えて飛び出し、数百万キロメートルもの先まで到達しているようです。
星から離れた物質は冷えて、ダスト雲を形成するようです。

“This hot, dense material continued to travel beyond Betelgeuse’s visible surface, reaching millions of miles from the seething star. At that distance, the material cooled down enough to form dust, the researchers said.”

NASA | HUBBLE FINDS THAT BETELGEUSE’S MYSTERIOUS DIMMING IS DUE TO A TRAUMATIC OUTBURST より引用

millions of miles なので、数百万マイルですが、1マイル≒1.6キロメートルなので、この距離スケールでは数百万キロメートルととらえておいても差支えはなさそうですよね。

放出の原因は不明だが、星の脈動周期と関係がありそう

なぜ物質の放出が起きたのかは不明のようですが、星の脈動周期と何か関係がありそうです。

“Although Dupree does not know the outburst’s cause, she thinks it was aided by the star’s pulsation cycle, which continued normally though the event, as recorded by visible-light observations.”

NASA | HUBBLE FINDS THAT BETELGEUSE’S MYSTERIOUS DIMMING IS DUE TO A TRAUMATIC OUTBURST より引用

it was aided by とあるので、脈動が放出減少を後押しした、という可能性を示唆していますね。
aid は 助ける・手助けする という意味です。

Andrea Dupree さんはこの観測を率いた研究者です。

超新星爆発の可能性は低そう

この Betelgeuse の減光現象が観測された当初は、超新星爆発の前触れではないか、と騒がれましたが、どうやらその可能性は低そうです。

” “No one knows what a star does right before it goes supernova, because it’s never been observed,” Dupree explained. “Astronomers have sampled stars maybe a year ahead of them going supernova, but not within days or weeks before it happened. But the chance of the star going supernova anytime soon is pretty small.” “

NASA | HUBBLE FINDS THAT BETELGEUSE’S MYSTERIOUS DIMMING IS DUE TO A TRAUMATIC OUTBURST より引用

No one knows は 誰も知らない ということですが、よく聞く言い回しですね。
right before というのも日常会話でもよく聞く表現で、直前 という意味です。
chance pretty small と言っているので、すぐに超新星爆発になる可能性はかなり低いようです。
pretty は程度を強調するときに使う表現で、とても○○ という意味を添えます。
カジュアルな場面では めちゃくちゃ小さいですよ とかなりそうですね。

用語や表現

Betelgeuse:ベテルギウス

ベテルギウスはオリオン座の肩の位置にある1等星です。
赤色巨星に分類される非常に大きな構成で、それそろ星としての寿命も近いようです。
巨大な恒星はその一生を終える際に超新星爆発を起こすことが理論的に予測されているため、Betelgeuse の減光ももしかしたら超新星爆発の前触れか!?と騒がれたんですね。

Betelgeuse’s dimming:ベテルギウスの減光

dim は 暗くなる という意味です。
Betelgeuse は冬の夜空で一際明るい星でしたが、2019年10月ころからにわかに暗くなり始め、2020年2月ころにはそれまでの輝きの3分の1程度にまで暗くなりました。
暗くなったのは Betelgeuse の南半球側だったようです。

その後一転して増光に転じ、2020年4月には元の輝きを取り戻したようです。
さらに最近の観測により、以前ほど劇的ではないものの、2020年5月~7月中旬にかけて再び減光しているそうです。
ダスト雲が原因なのか、あるいは何か別のことが起きているのか、今後の調査が待たれますね。

red super giant star:赤色超巨星

恒星はその質量と年齢によっていくつかのカテゴリーに分類されます。
Betelgeuse はその中で、

  • 質量が重く:太陽の10倍~20倍程度
  • サイズが大きく:仮に Betelgeuse を太陽の位置に置いた場合、その表面は木星の軌道あたりまで広がっているだろうと推測されている
  • 赤色の:年を取って赤色になった

赤色超巨星に分類されています。

phenomenon:現象

自然現象などの現象のことを表しますね。
複数形は phenomena

似たような表現に symptom がありますが、こちらは 何かの症状 という意味合いになります。
また event は、何か意図的あるいは偶発的に発生した事象、という感じですね。

behemoth:巨大なもの

もともとは旧約聖書に出てくる 巨獣・巨大な動物(一説ではカバらしい)のことのようですが、そこから転じて 巨大なものを指すときに使われるようです。

Betelgeuse 的な宇宙スケールでの巨大さを表すものから、人より大きなサイズの石の彫刻を指して表現したものもありました。
欧米系でなじみのある表現なのでしょうね。
日本だとなんでしょうね?

is destined to ~:~する運命にある

destine は運命づける という意味ですが、通常は be destined to と受け身で使われて、~する運命にある・~となる運命にある という意味になります。

destiny が 運命 という意味なので、そこからの派生で覚えやすいですね。

supernova:超新星爆発

あまり聞きなれない単語ですが、supernova は 超新星爆発 という意味の名詞です。

巨大な恒星がその一生の最後に大爆発を起こすのですが、その爆発のことを supernova と言います。
「星の一生の最後に起こす爆発なのに、なぜ超『新星』爆発なの?」と疑問でしたが、昔の人はこの phenomenon 現象を見て、「爆発が起きて新しく星が生まれたのだ!」と思ったのがその起源のようです。
ものすごい輝きを放つので、星が新たに誕生したように思えたのでしょうね。

precursor:前駆現象・予兆

あまり日常会話では聞かない単語ですね。

pre- は ~の前、cursor は マウスのカーソル で、何かを指し示すものという意味合いなので、合わせて 前もって何かを指し示すもの → 前駆現象・予兆 という意味になるのですね。

petulant:怒りっぽい

怒りっぽい、とか、短気な、という意味です。
子供っぽい感じのニュアンスを含むようです。

petulant outburst と言っている様子からは、怒って頭から湯気が出ているようなイメージが伝わってきます。
親しみのこもった擬人化的な表現ですね。

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