アメリカのハードボイルド小説作家 Raymond Chandler レイモンド・チャンドラー の小説を題材に、生きた英語表現を学んでいきたいと思います。
今回取り上げるのは Playback プレイバック です。
その中でもハードボイルド小説の雰囲気を醸成していく、様子や仕草を描写した表現を見ていきます。
こういう表現描写が独特の小説世界を作り上げていきますよね。
Contents
ハードボイルドな様子や仕草の表現 10 通り
get fresh with ~:~となれなれしくする・生意気になる
“Don’t get fresh with me, young man.”
Raymond Chandler, “Playback” p3., Vintage Crime/Black Lizard
get fresh with ~ は ~となれなれしくする・~に生意気な態度をとる という様子を表す表現です。
fresh に 生意気な・厚かましい・なれなれしい という意味があるのです。
Don’t get fresh with me. 私になれなれしくしないで はお決まりの表現ですね。
ここは小説の冒頭、主人公の私立探偵 Philip Marlowe のところに今回の依頼主の Clyde Umney が電話をかけてきた場面です。
会話のほんのさわりのところで Marlowe がいつもの調子で応じていたところで Umney がぴしゃりと言い放つセリフです。
Umney の高圧的な様子が早くも現れてきましたね。
get on with it:すぐに行動を開始する・ぐずぐずしないでやる
“Get on with it, you goof. […]”
Raymond Chandler, “Playback” p5., Vintage Crime/Black Lizard
get on with it は すぐに行動を開始する・ぐずぐずしてないでさっさと始める という意味です。
goof は こちらの記事 で解説していますが マヌケ・バカ・アホ という意味のスラングですね。
依頼主の美人秘書 Vermilyea が Marlowe に冷たく言い放つ場面です。
You have my word for that:それは私が保証する
“You’ll take it. You’re not asked to do anything wrong. You have my word for that.”
Raymond Chandler, “Playback” p5., Vintage Crime/Black Lizard
You have my word for that. は それは私が保証します という意味です。
for のところを on にして You have my word on it. それは約束します・保証します という言い方もしますね。
この案件を受けるかどうかまだ何も言っていない Marlowe にかまわずに話を進める Vermilyea が、この案件を受けると決めてかかって言うセリフです。
依頼主の Umney もそうですが、上から目線というか高圧的で有無を言わせぬ態度がにじみ出ている感じですね。
hold out on ~:~に隠し事をする
“I have one firm opinion. That you’re holding out on me.”
Raymond Chandler, “Playback” p11., Vintage Crime/Black Lizard
hold out on~ で ~に隠し事をする という意味です。
You’re holding out on me. あなたは私に何か隠し事をしている はお決まりの表現です。
Marlowe が電話に出た Vermilyea との会話で、からかいながら言うセリフです。
こういうことを言うから相手を怒らせるんだよねぇ、という予感を誘う一言ですね。
be rough with ~:~に荒々しい態度をとる
“Listen, Marlowe,” she said with sudden urgency. “I didn’t mean to be rough with you. […]”
Raymond Chandler, “Playback” p12., Vintage Crime/Black Lizard
be rough with ~ は ~に荒々しい態度をとる という意味です。
ここでは Vermilyea が電話越しに Marlowe に あなたに手荒な態度で当たるつもりはないのよ と一呼吸いれているセリフです。
ここまで高圧的な態度で接してきた Vermilyea ですが、なかなか素直に従わない Marlowe に対してまじめに依頼を受けてくれと諭すような口調で伝えるシーンですね。
sound off:はっきりと言う・あからさまに言う
“[…] I was just sounding off.”
Raymond Chandler, “Playback” p12., Vintage Crime/Black Lizard
sound off は はっきりと言う・あからさまに言う という意味です。
自分の意見や不平不満などをずけずけ言うような感じです。
Vermilyea が Marlowe に対して はっきりと言っていただけなの と自分の態度を振り返る場面です。
こういう一言が大事ですね。
give a damn:気にする・関心を持つ
Mostly because I didn’t give a damn.
Raymond Chandler, “Playback” p16., Vintage Crime/Black Lizard
give a damn は 気にする・気にかける・関心を持つ という意味のスラングです。
I don’t give a damn about it. そんなの知るかよ のような使い方をします。
Who gives a damn? 誰がそんなの気にするんだよ というのもありますね。
Marlowe がホテルにチェックインする場面で、ホテルの受付とのやり取りの最中に頭の中でつぶやくセリフです。
breeze off:消えろ・失せろ
“Breeze off. You bore me. […]”
Raymond Chandler, “Playback” p35., Vintage Crime/Black Lizard
breeze off は 消えろ・失せろ という意味で使うスラングです。
かなり口の悪い表現なので、使う場面は選ぶ必要がありそうですね。
小太りで短気な男 Goble が銃をちらつかせる場面ですが、そんなのはものともせずに Marlowe が 失せろ、くだらないやつだ と一蹴するセリフです。
銃を前にそんな強気な一言を言い放てるのが Marlowe の Marlowe たるゆえんですかね。
make a pass:言い寄る・口説く
“[…] A pretty nice guy. He made a pass at me once.”
Raymond Chandler, “Playback” p36., Vintage Crime/Black Lizard
make a pass は 言い寄る・口説く という意味の表現です。
pass に 色目・口説き という意味があるんですね。
ここではホテルの受付の女性が Marlowe との会話の中で何気ないエピソードを挿入しているセリフです。
sneer:冷笑する・あざ笑う
“And missed by from here to Pas Robles,” the clerk sneered.
Raymond Chandler, “Playback” p36., Vintage Crime/Black Lizard
sneer は 冷笑する・あざ笑う・半笑いで答える という意味です。
この Playback にはよく出てくる単語だと思います。
少し斜に構えた感じで、半笑いで受け答えする感じですね。
この小説の雰囲気を作り上げている仕草の1つではないかと思います。
ここではホテルの受付と Marlowe との会話で、受付の男が半笑いで答えるセリフです。
大したことではないのですが、ちょっと意味ありげな背景をにおわせようとしている感じですかね。
まとめ
Raymond Chandler の小説 Playback から、ハードボイルド小説の雰囲気を醸成していくような、様子や仕草を描写した表現を 10 個取り上げてみました。
こういう表現の積み重ねが小説の世界を作り上げていくのが伝わってきますね。